4.17. 地球環境農場の実現

農地において太陽光発電をおこない、農業事業者の収益を高め、地域を豊かにし、発電した電力によってエネルギー起源のCO2を大きく削減する地球環境農場の実現性を検討してきました。小規模の電力生産でよければ、強い日射を必要としない作物に適用するこ…

4.16. 地球環境農場のイメージ(4) 施設園芸での地球環境農場

作物によって必要な日射量が異なります。通常野菜類は夏季には遮光しますが、それ以外の時期は遮光しません。花卉類は一般的に通年遮光をするため、太陽光発電をするうえで有利です。国内の施設園芸面積をみると、圧倒的に野菜類の面積が広く、花卉類の栽培…

4.15. 地球環境農場のイメージ(3)太陽電池設置による施設園芸のエネルギー収支

162m^2の 温室屋根面に光透過型太陽電池を遮光率20%となるように設置した場合の年間発電量は12,489kWhとなります。 太陽電池は機材設置エリア(温室の北側)と屋根面の縁辺部に密に配置しました。機材設置エリアは通常温室の北側にあり、そこでは作物栽培を…

4.14. 地球環境農場のイメージ(2)施設園芸によるCO2排出量

農林水産分野から排出されるCO2は3,551万t-CO2であり、国内総排出量の2.6%です。このうちエネ ルギー起源のCO2排出量は1,160万t-CO2で、残りは農地や家畜がだすCH4やN2O*が主なものです。エネルギー起源の排出CO2のうち、558万t-CO2が農林分野からのもので…

4.13. 地球環境農場のイメージ(1)水田

エネルギー起源のCO2を大きく削減する上で、農地でのソーラーシェアリングは有効な手段です。特に水田は面積が広く(我が国の耕作地の約50%)、そのなかで単一作物を栽培するため太陽電池を画一的に設置できる利点があります。またコメの収穫量もさほど多く…

4.12. 地球温暖化による農作物への影響と対策

地球温暖化に伴って農作物への影響が現れています。コメについてみると1980年代から2000年代初頭にかけて一等米の比率の高い地域が日本南部から北部に移っています。また多くの農作物で品質の悪化や成長不良が報告されています。変化の原因は主に気温の上昇…

4.11. 農地でのソーラーシェアリングによる収益性

6種類の作物について太陽光発電をおこなった場合の収益性を計算しました。計算では、太陽電池の設置による日射量の減少が作物生産量の減少になるように設定しています。生産者単価が相対的安く、収穫量の少ない作物では収益差が大きくなり農業事業者にとって…

4.10.その他の作物の栽培と太陽光発電

トマトはコメに比べて単価が高く、また収量(年間生産量)も61,400㎏/haと多い作物です(コメ:5,300㎏/ha)。トマト栽培には強い日射が必要で、太陽光発電を併用すると日射量の減少に伴って生産量が低下します。太陽電池設置によるトマト生産額の減少と電力…

4.9. 水田での太陽光発電(2)

水田に光拡散透過型太陽電池を設置し、コメを生産しつつ太陽光発電をおこなう場合の経済性を検討します。国では農地で太陽光発電をおこなう場合、作物の生産量が20%以上低下しないことを条件に許可しています(農地法)。コメの栽培には強い日射が必要です。…

4.9. 水田での太陽光発電

水田面積は約241万haであり、国内農地の50%を占めています。水田でのソーラーシェアリングが成立できれば、莫大なエネルギーの生産が可能となります。コメの収穫は通常水田ごとにコンバイン機によって一斉におこなわれるため、水田内のコメの成熟に偏りのな…

4.8. 作物への影響の少ない温室併設太陽光発電

温室の屋根や側面等に太陽電池を設置する場合に、太陽電池による作物栽培への影響を軽減する方法として以下の方法があります。(1)温室の外壁フィルムを光拡散フィルムにする。これによって、太陽電池の設置によってできる影の影響が軽減できます(4.6. 太…

4.7. 光透過型太陽電池の効果

農地のうえに設置した太陽電池による作物への影響を低減する方法として、光透過型太陽電池を用いる方法があります。光透過方式としては太陽電池全面で光を透過する方式と太陽電池のセル間に光を透過する隙間(スリット)を入れる方式があります。光透過式の…

4.6. 太陽電池の作物への影響の軽減

農地に太陽電池を設置した場合、日射量の減少と日射量のばらつきが問題となります。温室に太陽電池を設置する場合の例を示します。温室の外壁フィルムに光拡散フィルムを用いた場合と、透明フィルムを用いた場合の太陽電池による影の影響を数値シミュレーシ…

4.5. 太陽電池の設置による作物への影響

温室に光透過型の有機薄膜太陽電池を設置し、太陽電池による遮光に伴う作物(トマト:桃太郎ヨーク)の生産量への影響を調べました。秋から冬にかけては温室内に86台(遮光率,18.1%)、春から夏にかけては106台(遮光率,23.6%)の太陽電池を設置しました。…

4.4. 太陽光発電による農地の遮光率と栽培作物

太陽電池を農地設置した場合の遮光率(太陽電池の総面積/太陽電池設置農地の面積)の例をみると平均46.5%で、強い日射を必要とする作物では相対的に遮光率が小さく、強い日射を必要としない作物では遮光率は大きくなっています。ソーラーシェアリングをおこ…

4.3. 農地での太陽電池設置の現状

農地での太陽光発電面積は2011年度以降増大し、2017年には8,000ha以上になりました。想定される発電出力は460万kW(太陽電池出力120W/m^2,遮光率47%で計算)以上です。1件当たりの発電面積は約1,700m^2(0.17ha)で、遮光率を47%とすると96kWの出力となりま…

4.2. 再生可能エネルギーの潜在量

再生可能エネルギーとして、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス発電、海洋エネルギーを利用した発電の導入予想量が検討されています。水力発電のうち大規模水力発電所は河川生態系への影響、健全な水循環の阻害、あるいは土砂の移動を妨げるため、今後開…

4.1. 将来の電源

地球温暖化防止対策の一環として、2050年代には先進国のCO2排出量を80%削減することが求められています。電力分野では原子力発電所を増設し、それらの稼働率を上げることでCO2排出量の削減に貢献する方針でした。しかし2011年の東日本大震災とこれに伴う福島…

4. 地球環境農場

地球環境農場では、農地において農作物と再生可能エネルギーを併産します。これにより農地の生産性が向上し、豊かで安定した地域社会を創出するとともに、国内のCO2排出量の削減に貢献できます。エネルギー供給システムや農業政策が大きく変わることが期待で…

3.10. 海洋深層水利用の展開

火力発電所の冷却用水として海洋深層水を大量に取水することで、発電所運用によって起こる環境問題を軽減できます。また取水した海洋深層水の一部を他の産業に供給することで、地域産業の創出や育成に大きく貢献できます。特に冷却用水として大量に取水する…

3.9. 海洋深層水の放流による藻場造成

昇温した海洋深層水を大量に海洋に放流する場合の利用法としては、藻場造成が有効です。海洋深層水を海域に放流すると短時間で拡散してしまいますが、放流域の沖合に潜堤を設置することで海洋深層水の貯留が可能です。 火力発電所放水口沖合に潜堤を設置する…

3.8. 海洋深層水放流域での海藻類の挙動

栄養塩を豊富に含んだ海洋深層水を放流すると、放流域の海藻群集の成長に変化が起こる可能性があります。昇温していない海洋深層水を漁港内に放流する試験をおこなった結果、海藻が大きく成長することが実証されています。 海洋深層水を昇温して放流した場合…

3.7. 海洋深層水放流域での植物プランクトン群集の挙動

海洋深層水を大量に放流した場合、深層水に含まれる高濃度の栄養塩によって植物プランクトンが増殖する可能性があります。一方で、深層水は水温が低いため、希釈率の低い場では増殖速度は低水温の影響を受けて、表層水よりも低くなる可能性もあります。海洋…

3.6. 海洋深層水放流による環境変化

海洋深層水を昇温した後に放流すると、放流域の水温、栄養塩濃度、pHが変化します。また、栄養塩濃度の変化は放水域の植物プランクトン群集や海藻・草類群集に影響を及ぼす可能性があります。海洋深層水を100万m^3/日で取水し、15℃昇温して放流した場合の環…

3.5. 海洋深層水取水によって連行される生物量

海水を大量に取水すると、取水する海水と一緒に生物の連行が起こります。発電所の場合、連行された生物は急激な温度上昇や、流れの変化によって損傷・死亡すると考えられています。 表層取水(通常の取水方式)と海洋深層水を取水した場合の生物量を比較しま…

3.4. 海洋深層水の利用によるCO2の排出量削減

海洋深層水の低温安定性を省エネルギーに利用することが可能です。 火力発電所の冷却用水として利用した場合の例を示します。60万kW級のLNG火力発電所では、冷却水量は100万m^3/日が必要となります。この冷却水に水温10℃の海洋深層水(周年ほぼ10℃)を利用し…

3.3. 海洋深層水の大量取・放水の影響と効果

海洋深層水を火力発電所の冷却用海水として利用した場合、60万kW級火力発電所で約100万m^3/日の深層水を取水することになります。年間を通じて低温な海水を冷却水として利用することで発電効率が向上し、発電所のCO2排出量の削減が期待されます。冷却用海水…

3.2. 我が国での海洋深層水の利用

日本での海洋深層水の取水は1989年からはじまり、現在では15箇所で取水がおこなわれています。取水量は沖縄が最大で1日あたり13,000m^3ですが、それ以外の地点では概ね2,000~4,000m^3の取水がおこなわれています。取水された海洋深層水の多くは水産業や食品…

3.1. 海洋深層水の特徴

海洋では概ね水深100mまで(表層と呼びます)太陽光が透過します。このため表層では太陽光(太陽エネルギー)によって水温が高く、季節によって変化します。表層混合層は概ね水深150m付近まで到達します。水深200m以深では太陽光が届かないため低温で、かつ…

3. 環境・エネルギーと海洋深層水

「海洋深層水」*とは海洋の水深200m以深の海水のことをいい、その特性としては低温、清浄(有機物が相対的に少ない)、富栄養(無機リン、窒素、珪酸等が相対的に多い)特性を有しています。このような特性を持つ海水を汲み上げて、多様な産業分野に利用しよ…