2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

3.10. 海洋深層水利用の展開

火力発電所の冷却用水として海洋深層水を大量に取水することで、発電所運用によって起こる環境問題を軽減できます。また取水した海洋深層水の一部を他の産業に供給することで、地域産業の創出や育成に大きく貢献できます。特に冷却用水として大量に取水する…

3.9. 海洋深層水の放流による藻場造成

昇温した海洋深層水を大量に海洋に放流する場合の利用法としては、藻場造成が有効です。海洋深層水を海域に放流すると短時間で拡散してしまいますが、放流域の沖合に潜堤を設置することで海洋深層水の貯留が可能です。 火力発電所放水口沖合に潜堤を設置する…

3.8. 海洋深層水放流域での海藻類の挙動

栄養塩を豊富に含んだ海洋深層水を放流すると、放流域の海藻群集の成長に変化が起こる可能性があります。昇温していない海洋深層水を漁港内に放流する試験をおこなった結果、海藻が大きく成長することが実証されています。 海洋深層水を昇温して放流した場合…

3.7. 海洋深層水放流域での植物プランクトン群集の挙動

海洋深層水を大量に放流した場合、深層水に含まれる高濃度の栄養塩によって植物プランクトンが増殖する可能性があります。一方で、深層水は水温が低いため、希釈率の低い場では増殖速度は低水温の影響を受けて、表層水よりも低くなる可能性もあります。海洋…

3.6. 海洋深層水放流による環境変化

海洋深層水を昇温した後に放流すると、放流域の水温、栄養塩濃度、pHが変化します。また、栄養塩濃度の変化は放水域の植物プランクトン群集や海藻・草類群集に影響を及ぼす可能性があります。海洋深層水を100万m^3/日で取水し、15℃昇温して放流した場合の環…

3.5. 海洋深層水取水によって連行される生物量

海水を大量に取水すると、取水する海水と一緒に生物の連行が起こります。発電所の場合、連行された生物は急激な温度上昇や、流れの変化によって損傷・死亡すると考えられています。 表層取水(通常の取水方式)と海洋深層水を取水した場合の生物量を比較しま…

3.4. 海洋深層水の利用によるCO2の排出量削減

海洋深層水の低温安定性を省エネルギーに利用することが可能です。 火力発電所の冷却用水として利用した場合の例を示します。60万kW級のLNG火力発電所では、冷却水量は100万m^3/日が必要となります。この冷却水に水温10℃の海洋深層水(周年ほぼ10℃)を利用し…

3.3. 海洋深層水の大量取・放水の影響と効果

海洋深層水を火力発電所の冷却用海水として利用した場合、60万kW級火力発電所で約100万m^3/日の深層水を取水することになります。年間を通じて低温な海水を冷却水として利用することで発電効率が向上し、発電所のCO2排出量の削減が期待されます。冷却用海水…

3.2. 我が国での海洋深層水の利用

日本での海洋深層水の取水は1989年からはじまり、現在では15箇所で取水がおこなわれています。取水量は沖縄が最大で1日あたり13,000m^3ですが、それ以外の地点では概ね2,000~4,000m^3の取水がおこなわれています。取水された海洋深層水の多くは水産業や食品…

3.1. 海洋深層水の特徴

海洋では概ね水深100mまで(表層と呼びます)太陽光が透過します。このため表層では太陽光(太陽エネルギー)によって水温が高く、季節によって変化します。表層混合層は概ね水深150m付近まで到達します。水深200m以深では太陽光が届かないため低温で、かつ…

3. 環境・エネルギーと海洋深層水

「海洋深層水」*とは海洋の水深200m以深の海水のことをいい、その特性としては低温、清浄(有機物が相対的に少ない)、富栄養(無機リン、窒素、珪酸等が相対的に多い)特性を有しています。このような特性を持つ海水を汲み上げて、多様な産業分野に利用しよ…