2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

2.7. 淡水赤潮の防除対策 (3)赤潮回収

淡水赤潮をつくるP.bipes の細胞は30~40μmと比較的大きいため、容易に分離回収することが可能です。市販のドラム式濃縮装置と脱水装置を組み合わせた方式で、P.bipes を分離・回収できることが実証されています。 赤潮を消滅させるには赤潮生物の増殖量を超…

2.7. 淡水赤潮の防除対策 (2)湖水の選択取水・放流による効果

ダム湖では下流側の河川の正常な流量を維持するために、一定量の放流をおこなっています(維持放流)。多くのダム湖では固定取水施設を設備しています。このような施設では貯水量が変化すると取水する水深が変化します。選択取水施設であれば、常に表層水を…

2.7. 淡水赤潮の防除対策 (1)流入水量の削減とその効果

河川から流入する栄養物質の量は河川流入水量に左右され、流量が多いと湖内に供給される栄養物質の濃度は指数関数的に高くなります。これは掃流効果と呼ばれ、高流量時に流域や河道内に溜まった栄養物質が一度に流れ出すことで起こります。 洪水時の水をダム…

2.6. ダム湖における淡水赤潮の形成過程

河川上流に建設された富栄養化していないダム湖において、赤潮が発生する原因は以下のように説明できます。 (1)春になりダム湖の水温が上昇しはじめると、シストからの発芽が起こり、細胞分裂によって栄養細胞が出現し、越冬栄養細胞などと一緒に増殖をは…

2.5. 淡水赤潮の形成要因 (3)増殖因子の数式化と増殖モデル

赤潮生物の増殖の過程を数式で表現できれば、赤潮形成の過程や形成要因を明確化できます。また防除対策を計画する上からも必要な対策規模の推定や、効果の予測に役立ちます。 主な増殖に必要な要素としては日射(光強度)、水温、そして増殖制限物質濃度が挙…

2.5. 淡水赤潮の形成要因 (2)増殖に必要な物質

淡水赤潮を形成するには増殖に必要な物質が供給されなければなりません。AGP試験*により増殖に必要な物質(増殖制限物質)を推定すると第1の増殖制限物質はリン、第2は窒素であることがわかりました。 これらの物質のダム湖への供給源を推定すると最も大きな…

2.5. 淡水赤潮の形成要因 (1)物理的集積

ダム湖での淡水赤潮の発生には赤潮生物の持つ運動性と、ダム湖特有の風や湖流が関係しています。 ダム湖では昼間は陸上が温かいため、湖面から陸上(上流)に向かう谷風が吹きます。 上流の河川水流入部では、河川水温は湖水表面水温より低いため、若干深い…

2.4. 淡水赤潮生物(Peridinium bipes)のダム湖での生活史

P.bipesは二分裂で増える無性生殖期(春~秋)と、配偶子を作って接合し、シスト(休眠接合子)となって越冬する有性生殖期(冬)を繰り返します。このような無性、有性生殖のパターンは渦鞭毛藻類に普通にみられるものです。 あるダム湖での赤潮発生時期の…

2.3. 淡水赤潮を構成する生物

現在ダム湖で淡水赤潮をつくる生物としては、渦鞭毛藻綱に属すPeridinium bipesが圧倒的に多くなっています。 大きさは30~40μmで、湖沼に生息するプランクトンの中では比較的大きい種類です。このため、湖に生息する動物プランクトンに捕食されにくい種類と…

2.2. ダム湖に発生する淡水赤潮

公表されている公的機関のダム湖の赤潮時発生状況からみると、現在もダム湖の淡水赤潮は発生しているようです。 赤潮が発生すると湖水の色が茶褐色に変色します。また湖面に薄い膜状の赤潮の塊が漂う場合もあります。 ダム湖での淡水赤潮の発生 ダム湖での淡…

2.1. 淡水赤潮発生の経年変化

瀬戸内海と琵琶湖ではいろいろな対策によって赤潮の発生日数は減少傾向にあります。このうち瀬戸内海での減少は主に大阪湾での減少が大きいようです。琵琶湖では淡水赤潮はほぼ無くなりました。赤潮の発生を左右する栄養塩濃度(リン濃度)は対策によって漸…

2.淡水赤潮

高度成長の時代(1960~70年代)に沿岸開発や湖沼流域の人口増加に伴って、赤潮が多発するようになりました。 これを解決するために流域からの排出物質の総量規制(1979年~)やメーカーによる洗剤の無リン化(1985年)、さらに下水道の整備が進められ、赤潮…