4.7. 光透過型太陽電池の効果

 農地のうえに設置した太陽電池による作物への影響を低減する方法として、光透過型太陽電池を用いる方法があります。光透過方式としては太陽電池全面で光を透過する方式と太陽電池のセル間に光を透過する隙間(スリット)を入れる方式があります。光透過式の太陽電池としては有機薄膜太陽電池やペレブスカイト太陽電池がありますが、現状の技術では発電出力が小さく、まだ実用的ではありません。結晶シリコン太陽電池は出力が大きいですが、全面透過型の太陽電池は作れません*しかし、太陽電池のセル間にスリットを入れることは可能です。
そこで、全面透過方式とスリットを入れる方式の太陽電池を設置した場合の床面日射量のばらつき(偏差)を数値シミュレーションによって検討しました。光透過率は全面透過方式もスリット方式も36.4%に設定してあります。
時刻別に変動係数(偏差/平均日射量 ,%)をみると全面透過方式の値が小さくなり、スリット方式に比べて全面透過方式の日射のばらつきが小さくなります。また、スリットの数は日射のばらつきに大きく影響しないことがわかります。しかし、10時から15時の結果を通してみると、変動係数はほぼ同じ値となり全面透過方式とスリット方式で差がなくなります。
将来、高出力の全面光透過型太陽電池が開発される可能性はありますが、現状の技術では高出力のシリコン結晶太陽電池にスリットを入れる方式でも作物への影響を低減しつつ、大きな電力を得ることが可能です。

*結晶シリコン太陽電池でも細かいスリットを太陽電池全面に入れ、全面透過にすることは可能ですが、光透過率は10%程度です。

f:id:jimotodakei:20191015164226p:plain

光透過型太陽電池の効果