2.5. 淡水赤潮の形成要因 (3)増殖因子の数式化と増殖モデル

赤潮生物の増殖の過程を数式で表現できれば、赤潮形成の過程や形成要因を明確化できます。また防除対策を計画する上からも必要な対策規模の推定や、効果の予測に役立ちます。

主な増殖に必要な要素としては日射(光強度)、水温、そして増殖制限物質濃度が挙げられ、これらの要素とP.bipes の増殖速度の関係式を培養試験から求めます。求めた数式を日々の増殖量の変化を表現するモデル式に入れることで、増殖量の変化が計算できます。実測したP.bipes の現存量とモデル式から計算された結果を比較しますと、ほぼダム湖での現存量の変化が表現できていることがわかります。このモデル式を解析することでP.bipes の増殖過程が説明できます。例えば、以下のようなことがわかります。

(1)P.bipes の増殖時期は5~11月にあり、増殖速度の高い時期は6~8月にある。最大現存量は晩夏から秋季にあり、春先から少しずつ増殖し、最大現存量に達する。

(2)12月~4月の増殖量の変化は主に水温に左右され、5月~11月は栄養物質(リン)濃度に左右される。栄養物質の供給量は河川流入水量によって決まる。

(3)ダム湖におけるP.bipes の増殖速度が推定でき(0.0344/日)、共存する他の植物プランクトンと比較して決して増殖速度が速いわけではない。

(4)年によるP.bipes 現存量(赤潮発生規模)の違いは主に河川から流入する栄養物質(リン)の量に左右される。

f:id:jimotodakei:20190620102507j:plain

増殖に必要な主な要素の数式化

f:id:jimotodakei:20190620102628j:plain

増殖モデル式とP.bipesの増殖の再現